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Vence (ヴァンス)
8.Vence (ヴァンス)
サン・ポール・ド・ヴァンスから車で15分ほど北・山側に上るとヴァンスの町になります。人口はサン・ポール・ド・ヴァンスの5倍近く多いのですが、観光客は少なく、南仏特有のボーと呼ばれる頂上が平らな小山の麓にある町です。このボー・デ・ブランの中腹にあるのがマティスが設計から内装までを手掛けたドミニク派ロザリオ礼拝堂(La chapelle du Rosaire)です。
ヴァンスの町が右手に見下ろせるほど山道を登った道端にひっそりと建っています。マティスは77歳から81歳(1951年)まで全精力を結集しこの礼拝堂を完成させた後、84歳で亡くなりました。
彼はこの礼拝堂について書いた文章の中で『この礼拝堂は私の人生の集大成である』『この仕事は私が選んだのではなく、人生の最後に天命により私が選ばれた仕事なのだ』と述べており、内装については『色は単純であればあるだけ見る者の気持ちに訴える。例えば青、補色の光に包まれた青は強いドラの響きのように訴えてくる。』『礼拝堂での最大の狙いは光と色によるステンドグラスと白地に黒のデッサンで埋まった壁面との均衡を取ることであった』としています。また『この仕事の評価は新しい芸術の波が来るまでわからない』と後世に託しています。ニースの高台にあるマティス美術館には彼がいかに多くの時間と精力を費やしたかを思わせる礼拝堂の模型や壁絵のデッサン等などが多数展示されています。
ヴァンスの町(旧市街)は優しい陽光のあふれる静かな町でした。旧市街の入り口の歴史ある泉には清らかな水が溢れ、老人が飼い犬にその水を飲ませていました。
メモランダム:ロザリオ礼拝堂に行くことにしたのは色彩の魔術師マティスの好きな作品が多数見れるものと期待して行ったニースのマティス美術館で見た礼拝堂の設計図や模型、僧衣、壁画のデッサンなど膨大な数の展示物に圧倒され一体どんな物を造ったのか知りたくなったからです。一度目は近くに行ったついでに寄り、締まっていました。2度目はミサがされており一瞬入れただけでした。3度目はボランティアのガイドが全て案内してくれました。2度目に入った時、一瞬目にした左手のステンドグラスを通し椅子に座りお説教を聞く人々の上に南仏の青・黄色の陽光が降り注いでいる光景は身震いするほど素晴らしいものでした。3度訪ねる価値はあると思い訪ねました。ただ作品として見るのではなく椅子に座り神父様の説教を聞きながら眺めてみたいと切に思いました。
マティスは死の淵にいた彼を看病し続けたシスターの依頼を受け無償でこの礼拝堂を製作したそうです。
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