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Camembert (カマンベール )
11.Camembert (カマンベール)
世界で最も多くチーズを食べているフランスで最も賞味されているチーズ、
カマンベールチーズはフランス・ノルマンディー地方の小さな村カマンベールが発祥の地です。生産地の名を冠するチーズは18世紀末に生まれたのですが、今では世界各地で生産されています。AOC(原産地呼称統制)はどうなっているのでしょう? 北海道でもカマンベールチーズを生産できるのはどうもその出生、生い立ちに秘密があるようです。
カマンベール博物館の説明文によれば:
『時は1791年風の強い雨降りの夜,黒装束の男がノルマンディー・カマンベール村の農婦マリー・アレル(Marie Harel)の家の戸を叩きました。彼はブリアール(Briard)地方の神父でフランス革命のなか地方に逃れる途中でした。
マリーは神父様を匿い助けてあげることにしました。ある日マリーがいつものフレッシュ(生)チーズを作っていると神父様は「私たちの町(ブリ)ではもっと大きく作り、寝かせ(熟成させ)ます。しかもこれが大変美味しいと評判なんですよ。」とそっと教えてくれました。マリーはチーズを熟成させることにしました。ノルマンディ地方はリンゴ栽培で有名ですが果実に付くアオカビも多く、数週間後マリーが味見をした時には白カビ(アオカビの一種です)が一面に広がるあのカマンベールチーズとなっていました。
その後ナポレオン三世が好んだとか、第1次大戦中兵隊に無料配布され人気を得、帰還兵がこぞって買い求めたとかありますがやはり販路拡大に寄与したのは19世紀末、ポプラの薄木でできた丸い容器が考案されたことでした。これにより中央、国外へも輸送が可能となり消費量が格段に増えました。』
この時点(1926年ごろ)でカマンベールなる名称はすでに公共のものとなっておりAOCは獲れませんでした。一方、遠くまで運ぶために生乳で作っていたチーズは、殺菌処理をして製造することになり風味に変化が出ました。そこで昔からの生産業者が製造方法を護るためマリーの昔話を押し出し、AOCを獲得したのが1983年でした。ただAOCの対象はカマンベールではなく昔ながらの生乳製法で作られたノルマンディーのカマンベールCamembert de Normandie(現在11社がこの製法で製造しています)となっていました。ですから今日、同じノルマンディーのカマンベールチーズでも殺菌処理したチーズはCamembert fabrique en Normandie(ノルマンディー地方で作ったカマンベール)とラベルに表示されています。
カマンベール村は上陸作戦のあったノルマンディーの海岸から内陸に50㎞程入ったリンゴ栽培で有名なカルバドス地方の外れにあります。この辺りは緑が多く、小さな清流や丘に囲まれ別名スイス・ノルマンド(ノルマンディのスイス)と呼ばれ酪農が盛んな田園地帯です。村は車で走れば2分もかからず通り抜けてしまう程小さいのですが村の中央を通る村道の両側に建つカマンベール博物館とそのショップ、カマンベールの館が世界中からチーズ好きを惹きつけています。博物館ではチーズの製造工程やマリー・アレルの再現された台所、昔からの製品ラベルなどが見学でき、ショップではカマンベールチーズをはじめノルマンディー地方のチーズの試食販売や関係書籍などの販売を行っています。
メモランダム:村の入り口の村営駐車場に車を停め博物館に向かったのですが午後2時からで閉まっていました。向かい側にある館(ショップ)は開いていましたので中に入るとガラス製の大きな冷蔵ケースにカマンベールチーズが多数並んでいます。右と左で値段が倍ほど違います。女性店員に訊くと高いほうがVraiブレ(真)カマンベールだと応えてくれました。カマンベール村を訪ねる予備知識としてFabriquer(make)が付いているものといないものがあることは知っていましたが何故ブレ(真)なのか、どちらがブレなのかも分からなくなっていました。早速、博物館を訪ね事情を了解した後に再度ショップを訪ねました。ショップは多くの観光客で賑わい、皆が目玉商品のノルマンディー4大チーズの盛合せを注文しています。ですがチーズは売るほどあるのに付き合せのバゲットがなくなり、販売員の女性はパンがないので売れませんと言います。すると近くにいた客がパンは車にあるから取ってくると数本のバゲットを抱えて戻ってきて、取りあえず並んだお客様は盛合せがいただけました。このシードルも付いた4種盛合せセットはチーズ好きな方にはかなりお勧めです。カマンベールは比較のためブレとブレでない両者を買って帰り、宿泊先で食べてみました。差は歴然でした。AOCを取得して護って行く価値は十分あると思いました。
ただ個人的には永年の疑問カマンベールとブリは同じではないの?が解決しました。