閘門(ロック)

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運河の旅のハイライトのひとつは間違いなく閘門(ロック)越えでしょう。

ロック

ロックが見えてきた時、クルーに指示を出すキャップテンの最大関心事はまずロックキーパーはいるの?いないの?ロックへの進入許可の信号は青、それとも赤?何隻入れるの?等などでしょう。また無事ロックに入り、水が流れ込んでくるのを見つめていると、ロックの扉が案外心許ないことに、拍子抜けする思いを抱くかもしれません。運河の水圧に耐えるのだから非常に頑丈な扉かと考えていたのに反し、単なる木製の永年の奉仕の跡がにじみ出ているような扉もあります。しかも微妙な角度で閉じています。
ではロック作業に入る前にまずこれらの疑問にお答えしましょう。
キーパーは居る、居ない?
まずキャップテンの最大関心事『ロックキーパーは居るの、居ないの?』の疑問に水辺ガイドは親切に応えてくれています。そうです水辺ガイドのロックの横を見てください。緑色のがついていればロックキーパーの居るロックです。ついていなければキーパーは居ません。もし青のがついていればキーパーはいませんが、それは全自動のロックです。

このロープを引きます 青の棒を押し上げます

この場合はロック手前に設置されているレーダーに自船を感知させるか、運河上に垂れ下っている捻じり棒を捻じるか、ロープを引くか、手持ちのリモコンを操作して運河の扉を開けましょう。水辺ガイドには赤丸線なる印をロックの前後に付けて捻り棒かロープを引くロックを表しています。そしてロックの中に入ったら岸に設置してあるボタンを押すか、カードリーダーにカードを挿入するか、青の押上げ棒を押し上げるかなどしてロック作業を開始しさせましょう。進行方向の扉が開いたら粛々とロックを出ましょう。
これが全自動ロックの通常の通り方ですが時に、レーダーもねじり棒も手持ちリモコンもない時があります。ブルゴーニュのセントラル(中央)運河のように、ロック扉の開閉が制御室からの遠隔操作されている場合です。この場合には制御室に電話をし、自船の存在を知らせて開けてもらいます。
では水辺ガイドのロックの横に何もついていない時は?
これはロックキーパー不在の手動ロックです。そう、クルーが岸に降りてロックの扉の開閉をすべて行います。
このようにロックの通り方は様々です。しかし各運河特有なものについては水辺ガイドに必ず説明されていますので注意してお読みください。

 レーダーによるものケーブルから垂れ下がったポールによるもの手持ちのリモコン操作によるもの閉鎖中のロック信号は赤
ついでにロック名の横にAuxonne(1,83)のように書かれた数字は上・下流の水位差をm単位で表しています。
マイターゲート
次に微妙な角度で閉じた木製のロック扉についてお話します。
現在フランスで広く使われているロック扉はイタリアのPhilippe Marie Viscontiヴィスコンティにより1440年に発明されたMitre Gateマイターゲートと呼ばれる2葉の合掌扉です。このマイター・ゲイトの扉2枚の幅はロック入り口の幅より約10%ほど長くなっていて、開いているときは脇の戸袋(?)内に静かに収まっていますが、閉まる時は約65度(2枚の作る角度は約130度)の角度で上流に飛び出る形で閉まります。これは上流扉でも、下流扉でもロック作業中に水圧を受けるのは常に上流側(飛び出る方を前とすると前側)だからです。これによりロックの内外からの水圧のバランスがうまく取れています。その後レオナルド・ダ・ビンチ等が扉の下部に小さな給排水口となる扉(ヴァンテル)をつけることを考えだし、給排水も、扉の開閉も容易になり今日に到っています。
マイターゲートがいかに広く使われているかは、水辺ガイドのロックを表す印がまさに上流扉と下流扉が上流に向かいしっかり閉じているマイターゲートの様子を表していることからも解ります。
ではロック作業を始めましょう。
レオナルド・ダビンチのミラノ サンマルコ運河閘門デザイン図、ヴァンテルが描かれている(右)開口中のヴァンテル水辺ガイドのロック表示上から見るとこんな風ですソーヌ川第20番オーソンヌロック、捻り棒によるオートマティク式、水位差1.83m